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サプライチェーン管理ツールSedexの導入に向けたツール紹介

  • はじめに

2022年には経産省から「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」が発行され、日本企業の人権DD実施の要請を背景に、今後は人権DD実施企業の増加が見込まれます。

一方、実際に日本企業の多くは人権DD(人権デューデリジェンス)への着手を開始したばかりであり、サプライチェーン管理ツールを利用する企業は限られています。

今回はそうした企業の人権DDの実施を支援する機能を持つSedex社のJANZ(日本、オーストラリア、ニュージーランド)チームのインプルーブメント・エグゼクティブである山本さんに、Sedexの機能を中心に前半で解説頂きます。後半は、今回取材を務める山澤が人権コンサル目線で、実際に導入を検討される事業会社にとって気になるポイントについて、深堀します。

  • Sedex山本梓さんのご紹介

「責任ある調達」や「人権デューデリジェンス」を実施するためのサポートツールを提供しているSedexのJANZ(JPN, AUS, NZ)チームにて、主に窓口業務やサービスローカリゼーションを担当。Sedex入社前は、安全認証機関においてコンシューマー製品の製品安全認証業務を担当後、評価企業にて企業のサステナビリティ評価業務に従事。2023年5月一般社団法人サステナブルコミュニティ代表理事に就任。

(前半)Sedexの概要・機能の解説

  • Sedexの概要

Sedexは2000年頃、イギリスの小売業者の会社が業界団体のような形で集まって立ち上げられた組織です。

当時は、各社が独自の監査基準やサプライヤーアンケート(取引先企業における、人権や環境侵害のリスクを評価するためのアンケート)を使用していたため、バイヤー企業とサプライヤー企業双方において重複作業が発生しておりました。これではリスク評価を実施するにおいて効率が悪いということで、共通の監査基準やアンケートを策定し、「責任ある調達」に関するサプライヤー情報を共通のプラットフォームにて保存・管理、・共有する考えが生まれました。これがSedexのコンセプトです。

Sedexは会員制サービスで、年会費を支払って利用頂きます。「バイヤー会員」と「サプライヤー会員」があり、会員の種類によって利用できるサービスが異なります。バイヤー会員は、自社の情報を入力し、それを可視化するだけでなく、取引先の情報やリスクスコア、国別人権リスクデータにもアクセスできます。一方、サプライヤー会員が閲覧できるのは自社情報のみです。バイヤー会員は、サプライヤー企業に対してSedexに入会して情報を提供するよう依頼し、サプライヤー企業は入力した情報をバイヤー会員に共有します。
また、SedexとSMETAという用語がよく併記されて説明されますが、SMETAは我々が所有する監査基準の名前です。「Sedexは監査を行っているのですか?」と聞かれることもありますが、正確にはSedexは監査を行っていません。Sedexは監査基準を設定した組織であり、実際の監査は公平性を保つために、多くの場合第三者の監査機関が実施しています。

  • Sedexプラットフォームの機能の詳細

 Sedexプラットフォームの機能は多岐に渡りますが、基本的な機能は情報入力&共有ツールである「Sedex Advance(現在新プラットフォームに移行中)」です。次によく使用される機能として「Analytics」と、「Radar」というリスク評価・分析ツールがあります。
・Analyticsは、集計ツールのようなもので、入力された情報(例:労働者の内訳など)を可視化させます。例えば、自社のグローバルサプライチェーン上で働く女性労働者の人数などが集計されて表示されます。
Radarは、Sedex独自のメソドロジーを用いてリスクスコアを算出する、より分析ツールとしての側面が強いものです。

自社や取引先企業が入力した情報だけでなく、国や業界リスクのデータにもアクセスすることができます。細かい人権リスク項目が用意されており、各国においてどれくらいのリスクがあるかが表示されます。データシートには、人権に関連するさまざまなトピック(強制労働、児童労働、安全衛生、環境問題も含む)に対するリスクレベルが、色や数字で表示されます。
※参考:機能の詳細は、以下のSedexのウェブページ、および販売代理店契約を結んでいる経済人コー円卓会議の公開資料から確認もできます。
Sedexプラットフォーム – Sedex
Sedex(日本代理店) | 経済人コー円卓会議日本委員会 (crt-japan.jp)

  • Sedexバイヤー会員の標準導入プロセス

Sedexが提供するデータとツールをどう使用するかは、各会員/ユーザーに委ねられています。これはツールとして自由度と柔軟性が高い、ともいえますが、責任ある調達やデューデリジェンスに時間とリソースを割くことが難しい場合、「いつ何をどう使ったら良いか教えてほしい・・」というお声もよくお聞きます。
会社によってはSAQ(アンケート)は使用せず、SMETA監査のみ使用する場合もあり、各社使用方法は千差万別です。今から説明するプロセスは、あくまでもSedexの活用手順としてよく使用されるプロセスとしてご理解ください。

すべてのツールにアクセスできるバイヤー会員を例にして説明します。

Step1:優先順位付け
まず、すべてのサプライヤーに対して評価を一度に行うのは難しいので、優先順位をつける必要があります。Radar機能を使いながら、国やセクター、製品のリスク情報を見て、サプライチェーンのどこにリスクがあるかを検討します。

Step2:コミュニケーションプランの策定
次に、コミュニケーションプランの策定が必要です。ITツールは、日常的に使用しないと使い方を忘れてしまうため、担当者を決める必要があります。また、部門を横断した活動となるので、責任者を決め、どの部署と連携が必要かを考えます。さらに、サプライヤーに対してもコミュニケーションを取る必要があります。どのようなコミュニケーションを取り、誰に連絡すれば効果的かを考えます。

Step3:サプライヤーにSedexへの入会依頼
また、エンゲージメントサポートとして、電話やメールでサポートを提供します。このサポートはSedex社員がサプライヤーに対しては、Sedexへの入会依頼を行い、説明会を開くなどしてコミュニケーションをとります。

Step4:サプライヤーアカウントとのリンク

サプライヤーが入会しても、自動的に情報へのアクセスはできません。LINEやFacebookのように、お互いの承認が必要です。これをリンクと呼んでおり、片方が送信し、もう片方が承認することで情報の共有が始まります。

Step5:サプライヤー情報にアクセス、Step6:リスク評価、Step7:対応領域の優先順位付け

情報にアクセスできたら、RadarやAnalyticsを使用してリスクを確認します。これに基づき、是正措置を優先順位付けして進めます。リスクスコアが高い順に並べ替えて、対象となるサプライヤーに対してコミュニケーションを取りながら進めます。
Step8:監査の実施 また、監査の用意もあります。例えば、中国では、SAQ(自己評価アンケート)の回答に信頼性がないとされることが多いため、監査を早めに行うケースもあります。監査は、プロセスの最初でも最後でも行うことができます。ヨーロッパや日本では、一般的に、Analyticsを使用してリスクを評価し、リスクが高そうな場所に監査を導入するケースが多いようです。

  • (後半)Sedex導入時のポイントを深ぼり
  • バイヤー企業がサプライヤー企業に、Sedexの入会を依頼することはハードルが高いように思われますが、その点、Sedexが一緒にサプライヤーに入会依頼をしてくれるのは非常に有益だと思いました。これは国内に留まらず、海外のサプライヤーとのコミュニケーションも含まれるのでしょうか。

山本回答:はい。例えば中国の場合、現地オフィスの中国語を話すスタッフが、現地サプライヤー企業に直接コンタクトをします。社内では、各言語を話せるスタッフがプロジェクト毎にまとめられ、サプライヤーが使用する言語でコンタクトをします。

  • サプライヤーにSAQを回答頂く際に、質問のカスタマイズは可能でしょうか。例えば、人権にセンシティブな中国では内容を少し修正し、無難なことだけを尋ねたいニーズもあると聞いたことがあります。

山本回答:いいえ、SAQについては、既存の設問内容を変更することはできません。カスタマイズが可能なのは、追加料金を支払って追加の質問をすることだけですので、削除・改変はできません

  • SedexのSAQは拠点ごとに調査が可能ということですが、バイヤーのお客様の中には、工場単位ではなく、サプライヤーの会社全体としての調査、例えば人権課題に関する方針を持っているかどうか、等について聞きたい場合もあると思うのですが、そのような調査は可能なのでしょうか?

山本回答:はい、SAQは基本的に事業所(サイト)単位で回答するものですが、サイトSAQの設問には会社(または本社オフィス)として回答するような設問(例:安全衛生に関する方針は策定されているか等)も混在しています。ただし、リスクスコアを含めたリスクに関する情報はすべてサイト単位で管理がされますので、会社全体に対する格付けなどは現時点では提供しておりません。

  • 2次サプライヤー以降の調査についてもSedexの機能があれば教えてください。

山本回答:サプライヤーの情報を共有する際には、先ほどお話したリンクが必要になりますが、リンクは2種類あります。1つは2社間のリンクで、自分とサプライヤーとの間のものです。もう1つは3社間のリンクで、これはバイヤー、仲介会社(多くの場合、商社)、製造拠点の会社との間のリンクになります。この3社間のリンクでは、仲介会社が2社をつなげる役割を果たします。これにより、バイヤーは2次サプライヤーまでの情報にアクセスできます。
ただし、この2次サプライヤーのデータの取得は、2社をつなげる役割を果たす仲介会社の協力があって成立するため、仲介会社のSedexへの加入状況も、バイヤー会員入会の際は考慮頂ければと思います。

  • 自分のサプライヤーがどれくらいSedexに登録されているか(費用対効果がどの程度あるのか)を確認することは事前にできるのでしょうか。

山本回答:ご希望であれば、自社サプライヤーのうち何社が既にSedex会員であるかは、100社程度であれば無料で確認が可能です。この場合サプライヤーの情報が必要なため、特に会社名、住所、そして可能であればメールのドメインを提供してもらう必要があります。データを提供いただければ、どれくらいの割合がSedexに登録されているかをお伝えすることができます。利用料についても教えてください。

山本回答:サプライヤー会員の年会費は基本プランで1サイト(事業所)あたり119ポンド+手数料です。これは日本円で約2万から2.5円程度です。(2023年9月段階)

バイヤー会員の年会費については各社の年間売上高に応じて異なりますので、弊社ヘルプデスクまでお問合せいただければと思います。

  • Sedexはバイヤーだけでなく、サプライヤーも料金を支払う体系になっているのはなぜですか。

山本回答:Sedexへの入会は、バイヤー企業だけでなくサプライヤー企業にもメリットがあります。メリット1.リスクを未然に防ぐための、より強固なマネジメントシステム構築のための改善活動に役立つ

サプライヤー企業は、全機能にはアクセスできませんが、SAQに回答することで簡易的な健康診断書のような評価結果を受け取ることができます。これを参考にしながら、サプライヤーは自分自身で改善活動を進めることができるようになっています。

また、SedexのSAQは、回答に変更があった場合にはいつでも編集ができるようになっています。編集された内容はスコアに反映されます。例えば、社内で新しい方針が作成された場合など、改善活動を実施した際にはそれをSAQにアップデートし、改善活動を継続的に進めることが可能です。

メリット2.他バイヤー会員にも簡単にデータをシェアできる=重複作業の削減ができる

一度Sedexに入会登録し、プラットフォームにデータを入力してしまえば、他のバイヤー会員に簡単にそれらのデータをシェアすることが可能です。これらがSedexにサプライヤーもお金を払って入会するメリットの一部です。

  • 最後に、Sedexを導入していると考えている方々に、何かアドバイスはありますか。

山本回答:最初にバイヤー会員として登録することに対して少しハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。その場合には、まずサプライヤー会員として始めてみるのも良いかもしれません。サプライヤー会員として登録すると、SAQにアクセスできることに加え、インヘレントリスクスコア(地域、国、セクター、コモディティに付随するリスクデータ)といった一部のレポートも閲覧できます。年間2万円程度でこれらのデータにアクセスできますので、比較的手頃な価格かと思います。サプライチェーンの評価にも活用したい、もっと詳細の分析データにもアクセスしたいとなった場合、後からバイヤー会員にアップグレードすることも可能です。

  • Sedexを導入したいと考えている方にとって、最初のステップとして何をすべきでしょうか。

山本回答:ウェブサイト内にあるお問い合わせフォーム、またはヘルプデスクまでお気軽にご相談ください。ウェブサイトの情報は、まだ日本語化されていない情報も多く、直接ご相談いただければ、より詳細の情報を提供することができます。
お問い合わせ:
https://www.sedex.com/ja/%e3%81%8a%e5%95%8f%e3%81%84%e5%90%88%e3%82%8f%e3%81%9b-%e7%b1%b3%e5%9b%bd/)

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この記事を書いた人

Rights.編集部です。

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